頭皮の皮膚常在菌は抜け毛や頭皮ニキビの原因?!その種類と正しい役割を解説。
頭皮には常に存在している“皮膚常在菌”というものがいます。
“菌”と聞くと、ちょっとびっくりしてしまうかもしれませんが、この皮膚常在菌にも様々な種類がいて、頭皮以外の皮膚の上にも存在しています。
今回は頭皮の皮膚常在菌の役割をご紹介します。
皮膚常在菌とは

常在菌とは、主に健康的な人の身体に、常に存在している微生物を指します。
常在菌は人間であれば、腸内に一番多く存在し、口腔内・皮膚表面、そして頭皮にも生息して様々な作用をもたらしています。
人の身体の表面には膨大な数の皮膚常在菌が生息して、その数はは多いところで、1㎠あたり10万個以上存在し、サイエンス誌に掲載された論文では205種類以上あると言われています。
皮膚常在菌の種類は大きく分類すると
- 人体の健康維持に貢献する善玉菌
- 身体に弊害をもたらす悪玉菌
とに分類することができます。
ただし、善玉菌でも現れる場所によっては害を及ぼす場合もあり、いるべき場所にバランスよく存在していることが理想とされています。
皮膚常在菌の主な役割・効果とは

頭皮に常在する菌の役割は、以下の効果があります。
菌と聞くとマイナスイメージを受けやすいですが、頭皮の保護に重要な役割を担っています。
拮抗現象
拮抗現象とは、すでにいくつかの種類でバランスの均衡が保たれている場所では、新たに病原菌が侵入してきても定着できないことを言います。
抗生物質などを投与して常在細菌を弱めた状態にすると、抗生物質に耐性のある菌が異常に発生し、バランスが崩れてしまうことで炎症や皮膚トラブルを引き起こす原因になります。
頭皮に皮膚トラブルが引き起こされると、薄毛・抜け毛などの様々なトラブルの原因にもなりかねます。
つまり、頭皮の皮膚常在菌のバランスが保たれることで、トラブルの元となる病原菌の定着や過剰発生を抑制することができ、頭皮の健康を保つ事ができます。
免疫系刺激作用
免疫系刺激作用とは、常在菌が免疫系を刺激して免疫力や抵抗力を向上させる作用です。
ある実験で、常在菌が全く存在しない無菌の場所で飼育された動物は、一般に飼育されたものよりも免疫力が低下するというデータも出ています。
頭皮において、皮膚常在菌による免疫系刺激作用により、外的からの刺激に強くさせて頭皮の免疫力や抵抗力を向上させます。
皮膚常在菌の種類

皮膚常在の代表的な種類を紹介します。
表皮ブドウ球菌
表皮ブドウ球菌は別名“美肌菌”とも呼ばれる菌です。
その理由は、皮脂成分であるトリグリセリドを、保湿効果のある成分グリセリンと脂肪酸に分解し、肌がうるおって美肌になるいう効果に由来しています。
脂肪酸は酸性に傾く頭皮を弱酸性に導き、アルカリ性を好んで繁殖する菌のバランスを調節します。
表皮ブドウ球菌は、肌の表面から0.02mm未満の角質層に生息しています。
皮膚の一番表面の角質層に生息しているため、洗顔で簡単に洗い流されてしまいます。
アクネ菌
アクネ菌は“ニキビの原因菌”として知っているという方も多いかもしれません。
マイナスイメージがある菌ですが、このアクネ菌は通常、表皮ブドウ球菌と同じように頭皮を守る役割を果たす大切な菌です。
通常アクネ菌は酸素を嫌う性質があるため、毛穴の奥や皮脂腺などの空気の入りにくい場所に住んでいて、表皮ブドウ球菌と同じように皮脂をエサにして、脂肪酸とグリセリンに分解しています。
ただし、不規則な食生活やストレスが原因で、皮脂が過剰に分泌されて毛穴を詰まらせると、酸素が遮断され、アクネ菌のエサである皮脂が大量に存在している状態になります。
すると、毛穴に存在するアクネ菌が異常に増殖してしまい、これが原因で炎症を起こし、ニキビを引き起こしてしまうのです。
黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌は食中毒の原因にもなる菌ですが、皮膚の表面にもかなりの数が住み着いています。
黄色ブドウ球菌の特徴としては、アルカリ性に傾けば傾くほど、元気になるという点です。
表皮ブドウ球菌がたくさん繁殖している健康な人の皮膚の表面ではトラブルを起こしませんが、お肌の表面がアルカリ性に傾き、表皮ブドウ球菌が少なくなると大増殖します。
黄色ブドウ球菌が増殖すると、頭皮は痒みや炎症を引き起こします。
痒みや炎症の部分を引っ掻いてしまうことで傷になり、その傷口でさらに黄色ブドウ球菌が増殖して、化膿やニキビ、皮膚炎などのトラブルを引き起こしてしまいます。
マラセチア真菌
マラセチア真菌とは酵母菌の一種で、皮脂や汗が過剰に分泌されると急激に増殖する性質があります。
正常な皮膚ではマラセチア菌がいても影響を受けることはあまりありませんが、脂漏性皮膚炎や、フケの原因になります。
マラセチア真菌は、アクネ菌と同じく皮脂分解酵素のリパーゼを分泌し、皮脂を遊離脂肪酸とグリセリンに分解します。
分解された遊離脂肪酸が酸化されると、毒性のある過酸化脂質に変化し、皮膚の炎症へと発展してしまいます。
マラセチア菌には
- マラセチア・ダーマティス
- マラセチア・シンポディアリス
- マラセチア・グロボーサ
- マラセチア・ファーファー
- マラセチア・レストリクタ
の5種が存在します。
このうちマラセチア・ファーファーは毛穴に侵入した時点で異物と認識される性質があり、すぐに免疫反応による炎症が発生します。
また、アトピー性皮膚炎の増悪因子であるという研究報告も発表されています。
健全な皮膚常在菌を育て、頭皮の健康化を目指すには
頭皮に存在している皮膚常在菌はフケや皮脂を食べながら生きています。
この皮フケや皮脂が過剰になってしまうことで、この皮膚常在菌が異常に発生してしまい、炎症などの皮膚トラブルを引き起こします。
皮脂は頭皮の保湿や保護にはある程度必要なものです。自身の頭皮が乾燥しやすいのか、それとも脂っぽいのかを見極め、適切な洗浄力のシャンプーを使うことが大切です。
最後に
頭皮に菌と聞くとどうしても抜け毛に直結してしまう、嫌な存在のイメージがありますが、実際はマイナス面だけではなく、頭皮の健康化・保護に役立つ存在であるということが分かりました。
しかし、この常在菌は生活習慣の悪化やストレスでバランスが崩れ、頭皮に悪影響を及ぼしてしまう可能性もあります。
規則正しい生活、食生活を心掛けることは、この目に見えない守護神を健全にさせ、頭皮の健康化につながると言えます。
もし、頭皮に炎症があり、あまりにも治りにくく、症状の重い皮膚症状が出た場合は、脂漏性脱毛症を引き起こす可能性もあるので、早めの皮膚科の受診をお勧めします。
症状の程度に応じて、抗真菌外用薬、内服薬などを処方することで軽快が望めます。