パラベンは毒性アリ? 選ぶならパラベンフリーのシャンプー?毒性や特徴を徹底解説
シャンプーに配合されている成分で、パラベンという言葉を一度は聞いたことはあるのではないでしょうか?
最近は“パラベンフリー”と記載されているスカルプシャンプーも多く販売されるようになってきています。
パラベン自体は、抗菌・防腐効果のある成分です。
パラベンと聞くと頭皮や髪に悪影響を及ぼすものというイメージが定着しつつありますが、一概にそうとは言い切れません。
今回はパラベンの特徴と効果、毒性について詳しく解説していきます。
パラベンとは
パラベンとはパラオキシ安息香酸エステル類の略で、殺菌・防腐目的で配合される成分です。
無色の結晶もしくは白色の結晶性粉末で、ほぼ無臭の石油成分の一種です。
パラベンには、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ベンジルパラベンなどの種類があります。
抗菌作用に優れた特徴から、化粧品やシャンプー以外では加工食品の一部や赤ちゃんのお尻拭きなど幅広く使用されている添加物です。
パラベンは肌荒れや吹き出もの、アレルギーを引き起こす可能性があるとして使用可能量が定められた旧指定成分です。

旧指定成分とは一体何ですか?

2001年4月1日に薬事法が改定されて全成分表示が実施されるまでは、アレルギーを引き起こす可能性がある成分だけを表示することが義務付けられました。
それまで「表示指定成分」と呼ばれていたものが「旧表示指定成分」です。
旧表示指定成分は香料を含め103種類あります。
パラベンの特徴と種類について
パラベンは殺菌・防腐効果のある成分ですが、特徴としては以下の点が挙げられます。
パラベン特徴リスト
- ほとんどの雑菌に対して抗菌効果がある
- 少量で防腐効果を発揮する
- 防腐できる持続性がある
- 価格が安価である
- 毒性は極めて低い
パラベンの種類
パラベンはいくつか種類のある中でも、メチルパラベン、エチルパラベン、プロビルパラベン、ブチルパラベン、ベンジルパラベン等が一般的に使用されています。
パラベンは配合率が高いと肌荒れの原因となり、使用量が上限1%という規定があります。
それぞれのパラベンの特徴について解説していきます。
メチルパラベン
化粧品成分表示名称
メチルパラベン
医薬部外品表示名称
パラオキシ安息香酸メチル
メチルパラベンは、水に0.25%まで溶け、非常に広範囲の微生物に殺菌力をもっている防腐剤です。
パラベン以外にも防腐剤としてして配合される成分にサリチル酸や安息香酸といったものがありますが、それと比較すると毒性がはるかに低く、肌刺激や敏感症も少ないとされています。
メチルパラベンは肌への刺激が弱いかわりに、殺菌力が弱く、メチルパラベンには殺菌できない微生物や細菌もある為、他のパラベンやフェノキシエタノールと組み合わせて配合されます。
エチルパラベン
化粧品成分表示名称
エチルパラベン
医薬部外品表示名称
パラオキシ安息香酸エチル
エチルパラベンは広範囲の微生物に殺菌力を持っている油溶性の防腐剤です。
メチルパラベンと組み合わせて配合されることで殺菌効果が増加します。
プロビルパラベン
化粧品成分表示名称
プロピルパラベン
医薬部外品表示名称
パラオキシ安息香酸プロピル
プロビルパラベンもエチルパラベン同様、油溶性の防腐剤です。
メチルパラベンは水溶性の防腐剤で、プロピルパラベンは油性の防腐剤なので、シャンプーに配合された場合、お互いの使用量を減らして防腐効果を向上できるために組み合わせて配合されます。
ベンジルパラベン
化粧品成分表示名称
ベンジルパラベン
医薬部外品表示名称
パラオキシ安息香酸エステル
ベンジルパラベンはシャンプーや化粧品の防腐剤以外に、飲料向けの防腐剤としても使われています。
また、シャンプーに配合される場合は、エチルパラベンやプロビルパラベン同様、メチルパラベンと組み合わせて配合されます。
シャンプーに防腐剤が必要。その理由とは
シャンプーの主成分は水です。
水は微生物が混入した時、繁殖しやすく腐敗しやすいものです。
また、シャンプーは風呂場という高温多湿の場所で使われるものです。
高温多湿な環境は、微生物にとっては繁殖しやすい環境と言えます。
これらの条件から、シャンプーは雑菌が繁殖しやすいものと考えられます。
シャンプーのボトル内で雑菌が繁殖してしまうと、変質や腐敗の原因になり、安全に使用することは出来ません。
そこで、安心・安全に使うためにも、シャンプーには防腐剤が必要なのです。
パラベンをはじめとした防腐剤は、雑菌の侵入や繁殖を抑制し、清潔な状態を維持して保管できるように配合されています。
もし、シャンプーにこれらの防腐剤が入っていなければ数日で腐敗してしまうと言われています。
パラベンの毒性について
パラベンフリーのシャンプーが数多く発売されている中、パラベンには毒性やアレルギー性があるのか、調査結果のデータについてご紹介致します。
パラベンによるアレルギー(皮膚感作性)について
パラベンはアレルギー(皮膚感作性)に関する研究結果をご紹介します。
Parabens are practically nonirritating and nonsensitizing in the human population with normal skin. Paraben sensitization has been reported when Paraben-containing medicaments have been applied to damaged or broken skin.
パラベンは、正常な皮膚を有するヒトにおいて、事実上非刺激性であり、非感受性である。 パラベン含有医薬品が損傷した皮膚に塗布された場合、パラベン感作が報告されている。
このデータによると、健常な皮膚の場合アレルギー反応は起きにくく、皮膚炎などの皮膚の異常がある場合にはアレルギー反応が起きやすいと解釈できます。
ただ、現在多くの化粧品や洗浄製品にパラベンが配合されている中で、重大なアレルギーが報告されていないことから、アレルギー反応(皮膚感作)が起こる可能性は限りなく低いと考えられます。
紫外線の作用で肌が老化するという研究結果について
朝日新聞の記事で、パラベンには紫外線にあたると皮膚細胞の老化を進行させる作用があるという研究結果を見つけました。
ファンデーションなど化粧品の防腐剤として広く使われている
メチルパラベン(通称:パラベン)には、紫外線があたると皮膚細胞の老化を進める作用があることが
京都府立医科大 生体安全医学講座(吉川敏一教授)の研究で分かった。
記事の内容には細胞毒性試験法で老化を予測できるものか?という根本的なところには触れられていません。
また、研究は細胞毒性試験の結果によるものです。
細胞毒性試験は動物実験代替法として、非常によく研究されている手法ですが、主には皮膚刺激性や眼刺激性を見るもので、老化まで予測できるような試験法ではないと考えれれます。
上記の2点から考えると、パラベンが紫外線と反応すると細胞の老化を進行させるというのは正確性に乏しいデータと考えられます。
発がん性について
2004年にDarbre医師らは、乳がん患者の腫瘍組織の中からパラベンが検出されたという報告がありました。
Darbre医師らは脇用の制汗剤に含まれているパラベンが乳がんを誘発した可能性があると示唆しました。
パラベンの発がん性については十分に証明されたわけではなく、今後研究が必要と指摘されています。
30年前、パラベンは1000人に3人の割合でアレルギーを引き起こす可能性があるとして、“旧表示指定成分”とされていました。
しかし、30年間の間で防腐効果を保ちつつ、肌への影響を最小限に抑えた配合量などの研究が進み、安全に使用できる技術が進歩しています。
パラベンが0.25%以上の濃度で配合されていると刺激を感じる、アレルギー反応が出てしまうという人がいるのも事実ですが、シャンプーには界面活性剤や香料や着色料なども配合されているので、パラベンによってアレルギーが出ているのかどうか見極めることが大切です。
パラベンの性質を正しく理解した上で、自身の体質にあったシャンプーを選ぶようにして下さい。
パラベンは組み合わせによって抗菌力が増加する
パラベンは組み合わせることによって抗菌力が強まるというデータがありましたのでご紹介致します。
対象
- パラベンなし
- MP:メチルパラベン
- EP:エチルパラベン
- PP:プロピルパラベン
- cfu:コロニーとして検出された菌数
メチルパラベン単体とメチルパラベン・プロピルパラベン組み合わせとの効果比較【酵母】

引用:上野製薬株式会社
メチルパラベン単体とメチルパラベン・プロピルパラベン組み合わせとの効果比較【カビ】

引用:上野製薬株式会社
グラフをみると、酵母に対してはメチルパラベンを0.3%配合するよりもメチルパラベン0.2%とプロピルパラベン0.1%を併合したほうが素早く確実に防腐できているのがわかる一方、カビに対してはメチルパラベン0.3%のほうが抗菌力が強く、プロピルパラベンはカビの抗菌力が弱いとわかります。
メチルパラベンはカビに対して素早く確実な抗菌力があることから、様々な菌をできるだけ微量で防ぐには、メチルパラベンに微量のプロピルパラベンやエチルパラベンをセットで併用するのが効果的なことがわかります。
パラベンフリーで注意すべきこと
パラベンフリーとは、パラベンを使用していないという意味で使われます。
しかし、あくまでパラベンが配合されていないということで防腐剤が使われていないということではありません。
この場合、パラベン以外の防腐剤が配合されていると考えられます。
例えば緑茶由来成分の防腐剤としてにフェノキシエタノールがあります。
このフェノキシエタノール単体では防腐効果が低いため、パラベンと同様の効果を得るためにはパラベンの約3倍の配合量が必要となります。
大量に配合されるとその分、頭皮に対しての刺激や毒性が強くなってしまいまうという危険性がありあます。
このことから一概にパラベンフリーなら安心・安全とは言い切れないのです。
シャンプーには防腐剤は使われるというのを前提に、どのような成分が防腐や抗菌目的で配合されているか見極めることが大切です。
パラベン以外の防腐剤としては、ヒノキチオール、1.3-ブチレングリコール、アルコールなどがあります。
天然由来の防腐剤なら安心なのか
シャンプーの中にはパラベンなどの人工防腐剤を使用せず、天然由来の防腐剤を使用したシャンプーもあります。
天然由来の防腐剤とは、わさび、唐辛子、ヒノキ、生姜、ローズマリーなどから抽出したエキスに含まれる成分を使用します。
特徴として、肌への刺激が少なく頭皮の常在菌を排除することもありません。
しかし、これらの成分は生産コストが割高になったり、ある一定の菌にしか効果がないなどの問題もあります。
最後に
パラベンは防腐剤。防腐剤と聞くと肌に悪影響を与えかねないという盲目的なイメージがありますが、パラベンは刺激が低く安全性が高い成分ということが言えます。
シャンプーは高温多湿の場所に常に置いてあるものなので、菌の発生の抑制は必須です。
もし、細菌が大量に繁殖したシャンプーを使用してしまった場合の肌や髪の毛に対する影響は言わずもがなです。
“パラベンフリー”や“天然由来の防腐剤”などの言葉に踊らされることなく、自分にあったシャンプーを選ぶことは大切です。